豆寄席第47回『生成AIは人材育成における敵か味方か 生成AI活用事例と向き合い方』開催報告
本稿は、豆寄席第47回の開催報告です。
開催概要
| タイトル | 生成AIは人材育成における敵か味方か ~生成AI活用事例と向き合い方~ |
| 講演者 | 株式会社豆蔵 ビジネスソリューション事業部 高博昭 氏 株式会社豆蔵 ビジネスソリューション事業部 松崎興平氏 |
| 開催日時 | 2025年11月27日(木)18時30分~20時00分 |
| 講演概要 |
ここ数年で生成AIが我々の生活、業務の中で身近なものになっています。研修をはじめとする人材育成においてもその波は確実に訪れています。 |
講演の流れ
- 生成AIは敵か?味方か?
- 新人研修での生成AIのスタンス・事例
- 教育におけるAIの活用事例Part1
- ディベートのご紹介
- 教育におけるAIの活用事例Part2
- まとめ
なお、講師として登壇された 二人は、弊社・豆蔵にて各企業向け人材育成サービスを担当しており、前職では大学教員として教育事業に従事されていた経験豊富な方々です。
生成AIは敵か?味方か?
はじめに、「生成AIは敵か?味方か?」というテーマで、生成AIの現状とその影響についてお話させていただきました。
生成AIの登場により、文章作成や基本的なプログラミングはAIで自動化される時代になりました。アメリカでは、新卒者向けのエントリーレベルの仕事がAIに置き換わり、大卒新人の失業率が上昇しています。また、2023年から2年間でプログラマー職の総数が27.5%減少し、1985年以降最小になっています。GoogleやMicrosoftでは、新たにリリースされるコードの3割がAIによるものとの報告もあります。
特徴的なのは、AIが「誰もが使える技術」である点です。使い方次第で、人を置き換える「敵」にも、能力を拡張する「味方」にもなりえます。
教育分野でもAI活用が進んでおり、オンライン学習やAI教材が広がる一方で、個別指導の質や学習効果への影響などの議論も始まっています。
新人研修での生成AIのスタンス・事例
次に、各企業の新人研修における生成AIの活用スタンスや事例について紹介させて いただきました。
企業の研修におけるAI活用のスタンスは大きく二つに分かれます。
- 積極派:契約済みAIを研修で活用
- 慎重派:使用可だが限定的/思考力低下を懸念
弊社で請け負っている研修においては、調査した範囲では生成AIの使用を全面的に禁止している企業は見られず、多くの企業で何らかの形で使用が認められています。
◆事例A:プログラミング研修での活用
AI活用により、受講者の上位層・中位層 の自走力が向上しています。エラーに関する質問が減り、講師は下位層の支援に集中でき、結果として全体の底上げに成功しています。
◆事例B:技術要素などの知識の深掘りにおいて活用
上位層はAIを使いこなし深掘りが進む一方、中~下位層は「曖昧な質問→浅い回答→理解不足」という悪循環に陥る傾向があり、2極化が進んでいます。
◆生成AIを活用する上で必要な能力
こうした差を生む要因として、生成AIを使いこなすには批判的思考、ドメイン知識、自己効力感、文章力・論理的思考力が重要だと指摘されました。AIが効果を発揮するかどうかは、受講者側のスキルに大きく依存するという示唆が得られた事例です。
教育におけるAIの活用事例Part1
ここでは、豆蔵社の教育現場における生成AI活用事例の第1弾として、研修での実践例についてお話 させていただきました。
研修で一般的な生成AIを使うと、受講者が答えだけを求めてしまい、思考が深まらないという課題があります。そこで、受講者が段階的に考えられるよう誘導する独自チャットボット「教えて豆くん」が試作されました。
このアプリはチャットボットの裏側にプロンプトを組み込み、受講者の思考プロセスをガイドするように設計されています。
しかし、企業研修で外部提供のAIチャットボットを導入するには、個人情報保護やセキュリティの面でハードルが高く、本格的な活用は難しい状況です。そこで本ツールは、研修現場で受講者が利用するのではなく、講師育成用ツールとしての活用が検討されています。
「教えて豆くん」は講師がテーマを設定すると仮想受講者として質問を投げかけ、講師が回答するたびに次の質問を展開し、やり取り終了後には対応力を評価する仕組みです。
教えて豆くん
なお、講演中のチャット欄では、生成AIの研修利用に同様の課題を抱える参加者から「受講者に使わせるのではなく、講師の育成に活用するという視点は新しい」「講師育成の課題解決につながる」といった好意的な意見が寄せられていました。
ディベートのご紹介 - 新人研修でAIを活用すべきか
ここでは、「新人研修でAIを活用すべきか」をテーマに、豆蔵社の教育担当者同士によるディベート事例を紹介させていただきました。
また、このテーマに関しては、講演会参加者の約40%が賛成という結果でした。
ディベートの結果
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ディベートの結果
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特に指摘されたのは、AI依存は講師依存より気づきにくく、情報過多や学習プロセスの省略によって「わかったつもり」になりやすい点です。研修設計では、理解度や自己効力感への影響も考慮する必要があるとのことでした。
教育におけるAIの活用事例Part2
ここでは、教育現場での生成AI活用事例の第2弾として、アンケート集計や採点業務の効率化についてお話 させていただきました。
- アンケート要約ツール
研修後のアンケートやコメントの集計には多くの時間がかかり、講師の準備時間を圧迫していました。生成AIを活用したアンケート要約ツールでは、Excelに回答を貼り付けるだけで、全体要約やポジティブ/ネガティブ分類が可能です。試算では、作業工数を0.4人月から0.06人月に削減できると見込まれています。 - 自動採点ツール
テストの採点自体は既存のツールや簡単なプログラムでできますが、詳細フィードバックには講師の負担が必要でした。生成AIを活用した自動採点ツールにより、受講者個々の理解度分析、受講者全体の横断的な分析が可能です。習熟度の低い受講者の特定が可能になり、フォローアップの質向上と講師負担軽減が期待されます。
まとめ
最後に、AIの活用が学習者や講師に与える影響と、それを「味方」に引き込むために必要な力についてお話させていただきました。
AIは使い方次第で「敵」にも「味方」にもなります。上位層はAIで学習を加速できるので「味方」に、下位層では依存や理解不足を助長する可能性があるので、講師視点では「敵」になる可能性があります。
AIを「味方」に引き込むためには、講師も受講者もスキルセットの変化・拡充が必要になります。
AIを味方にするために必要な力
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最後に、講演者は「生成AIは学習を拡張する手段であり、利用自体を目的にしないことが重要です」と締めくくっていました。
所感
教育現場における生成AIの活用について、具体例を交えての説明がありました。受講者の能力によって学習効果が二極化する点や、講師のスキル向上や事務作業の効率化にもAIを活用できる点が特に参考になり、AI活用のイメージを明確にできました。
また、参加者からは多くの質問や感想が寄せられ、印象的だったのは「産業革命で自動車が発展した結果、脚力が衰えたように、AIへの依存で思考力・認知力が低下しても、社会が回るなら問題ないのでは」という意見です。これまで考えたことのなかった視点で、AI活用を多角的に考えるきっかけになりました。
教育現場でのAI活用はまだ手探りですが、メリットを最大限に引き出せる研修運営を目指し、今後も情報収集を続けたいと思います。
今後の 豆寄席 へのご参加もお待ちしております!