アジャイルなマインドセットとは①

豆蔵の中の人ナカサトのヒトづくり・モノづくり・コトづくりへ一言 第11回

中佐藤 麻記子

みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
思いがけずできた空き時間。想定していなかった春の過ごし方。
普段じっくり考えられないことを、ゆっくりと考える時間もよいかもしれません。
私としては、鬼編集長に催促されずに記事を書いたのは、これが初めてです。

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「アジャイルなマインドセット」?

いきなり大上段のタイトルです。なぜこんなことを考えたかというと、お客様の資料をレビューしている中に、この言葉が何度も出てきたのが、きっかけです。「アジャイルのマインドセットを重要視して、計画しましょう」みたいな感じで。私は一応資料のレビューアーの立場なので、「アジャイルのマインドセットって、なんやねん」「これだと、アジャイルを理解していない人には伝わらんぞ」とイチャモンを…もとい、ご指摘をしました。

書いた方からの回答は、それはそれで納得のいくものだったのですが、「私なら答えは違うな」「人によって答えは違うかも」と思いました。というわけで、これから複数回に分けて、ナカサトの考える、アジャイルなマインドセットとは、を挙げていきたいと思います。

先に申し上げておくと、これは「アジャイルなマインドセットとは、これでなくてはならない」という正解を示すものではありません。答えは人によって違っていてよいと思います。この機会に、「自分ならこう考えるかも」「これをネタに他の人と話すのもよいかも」などと、思っていただけると嬉しいです。

 

その1:小さく失敗すること

早速、ひとつめです。これは、アジャイルを理解している方なら、賛成してくださる方が多いのではないでしょうか。Agile Japan 2015のテーマは、「失敗から学ぶアジャイル、成功につなげるアジャイル」でした。今でも秀逸なテーマだと思っています。

「失敗」というネガティブな言葉をテーマとして掲げることに、違和感をお持ちの方もいらっしゃるでしょうか。しかし、この感覚を受け入れることが、アジャイルへの重要な第一歩だと考えています。これを別の言葉で言うのであれば「最初から完璧に成功することはできない、ということを受け入れる」でしょうか。

どんなシステムがあればビジネスに資するのか、どんな機能があればよいのか、それを作るのにどのくらい時間がかかるのか。時に、ソフトウェアエンジニアは、「正確な見積りを出せ」「見積りしたらその通りにできないとおかしい」「プロなんだからどのくらいでできるか分かっているはずでしょ」という、理不尽な言い方をされます。これが理不尽だと思えない方には、こう言ってみましょう:
  「では、絶対儲かるビジネスやプロダクトを考えてください。プロなんだからできますよね」

改めて言うまでもなく、今の環境はあらゆるレベルで「不確実さ」にあふれています。
最初からすべてを計画に織り込むことはできないし、できるだけ精度の高い計画を、と頑張ろうとすると、最初の計画段階でおそろしく時間がかかってしまい、その間に世の中のほうが変わり、ビジネス機会を逸します。また、「最初の計画は正しいはず/正しくなければならない」で、突き進むと、そこに待っているのは「大きな失敗」です。

ビジネス側の方にソフトウェア開発の不確実性を受け入れていただくのと共に、システム側もビジネスの不確実性を受け入れる必要があります。アジャイル開発の現場でも時にこんな不満が開発チームに出てくることはないでしょうか。
  「プロダクトオーナーの言うことがコロコロ変わる」
  「せっかくきれいに設計して作ったのに、また変えないといけないのか」
  「プロダクトオーナーはもっと詳細にバックログを書いてほしい」

もちろん、本当にダメダメなプロダクトオーナーが存在することは事実ですが、ビジネス側も絶えず変化をしていることや、プロダクトオーナーもチームの一員であるということを思い出して、「どうしたらよりよくできるのか」を考えてみんなで先に進もうとしなければ、よい結果には結び付きません。ビジネス側の話を、「それはプロダクトオーナーが考える話でしょ」と押し付けるのは、あるべき姿ではないはずです。

小さな失敗を受け入れつつ、少しずつ進む。ただしその時に、事実を関係者全員に分かるようにする。スクラムの「検査/適応/透明性」ですね。

 

続きます

さて、その1というからには、続きがあります。
また遠からず、お目にかかりましょう。