全4回『DXリスキリングセミナー』の第3回目「ケイパビリティ編 -モダンアプリケーション開発のリスキリング経験-」参加リポート

目次

  • はじめに
  • 講師紹介、第1回セミナー概要
  • セミナーの流れ
    ◇開発スキル・ケイパビリティについて
    ◇プロダクト開発の問題と課題
    ◇チーム開発のためのケイパビリティ
    ◇まとめ
  • Q & A
  • 所感
  • 最後に
     

はじめに

豆蔵では、お客様のデジタルトランスフォーメーション化(DX)に関する取り組みの中でも、重要な課題であるDXを推進するための人材育成支援を展開しています。

2023年6月より、ITフリーランス向け案件紹介サービスを展開する株式会社フォスターネットと豆蔵は、全4回で構成される「DXリスキリングセミナー」を開催しました。

今回は、第3回目のセミナーとなる「ケイパビリティ編 モダンアプリケーション開発のリスキリング経験」について紹介します。
 

講師紹介、第3回セミナー概要

講師:加藤 香織(株式会社豆蔵 デジタル戦略支援事業部第1グループ コンサルタント)
日時:2023年8月23日(水) 19時~20時
会場:zoomによる開催
 

セミナーの流れ

豆蔵の加藤より、ITエンジニアの開発スキルとして、ケイパビリティの概要と必要性を説明し、開発チームでの取り組み方について解説しました。

開発スキル・ケイパビリティについて

ケイパビリティとは、特に専門分野における実務能力や将来性の能力を指すそうです。その中で、ITエンジニアに求められるケイパビリティとして、高い開発スキル、組織や開発チームが採用しているプロセスやプロダクトへの理解を挙げていました。後者では、チームメンバーとのコミュニケーション能力が特に重要になるそうです。

プロダクト開発において、お客様に上質なサービスを提供するには、生産性を上げるために作業者を増やすという方法があり、この際に、ITフリーランスの皆様がチームにアサインされた場合、すんなりとチームに入れるのか、という問題があるそうです。例えば、開発スキルのギャップやメンバーと作業に関する会話ができるのか、といった不安要素があり、これらの不安を解消するために、イネイブリングチームの導入に関する話題に移りました。
 

プロダクト開発の問題と課題

チームトポロシー(参照:https://pub.jmam.co.jp/book/b593881.html)によると、イネイブリングチームは4つの基本的なチームのうちの1つとして構成されているとのことです。ほかのチームには、ストリームアラインドチーム、プラットフォームチーム、コンプリケイテッド・サブシステムチームがあり、各チームの役割は以下の表に記載します。特にストリームアラインドチームは、アプリの機能をリリースし、価値を届ける役割を担うため、このチームの効率をよくする必要があるそうです。

表:基本的なチームタイプ
チーム名 役割
ストリームアラインドチーム  アプリ機能をリリースし、価値を提供する
プラットフォームチーム 基盤のサポートを行う
コンプリケイテッド・サブシステムチーム 特定のスキルと知識に依存するシステムの一部を構築して保守する役目をもつ
イネイブリングチーム ストリームアラインドチームに必要なスキル、学習といった能力のギャップを埋めることに貢献する

開発チームは、早く安定してソフトウェアを届ける役割がありますが、やみくもに人を増やしても効率が高まるとは限らないようで、チームトポロジーのようなチーム設計が開発効率を高める鍵となるそうです。
ストリームアラインドチームはリリース作業もしつつ、新たな技術を獲得する必要も生じるとのことです。そこで、イネイブリングチームが学習支援を行うことで、スキルギャップを埋めていくこと、また、他のチームとのスキルギャップを埋めることも、このチームの役割であると伝えました。このような体制が整っていることで、開発チームにプロジェクト途中から参画したITフリーランスの方々が抱えているスキルギャップやコミュニケーションの不安を解消できる可能性を示唆しました。

既存メンバーとのスキルギャップを埋めるアプローチとして、スキルケイパビリティマップがあります。このマップを使うことで、以下について明らかになるそうです。

・プロダクトがどのような技術を使っているのか
・既存チームメンバーにとって暗黙知が何か
・自分が得意な/足りないスキルは何か

スキルケイパビリティマップを使うことで、自己評価採点やチームに参加できる基準の点数を定めることが可能になるそうです。このマップは大分類、中分類、小分類といった項目に分かれており、例えば大分類:言語情報→中分類:マイクロサービス→小分類:スケーラビリティといったように、開発する際にどんな技術が必要なのかを知ることができるとのことでした。このマップは開発チームごとに作成し、それに基づいて評価指針を設定することも可能であると話していました。新たなメンバーが既存メンバーとのスキルギャップを埋めるには、人に教えられるまでではないものの、理解できている、自分1人で使える程度であることが望ましいそうです。これらを使用して学習した方々からは、「チームでの仕事の際に、自分の見通しが悪かった」「開発の局面で必要とする技術の重みが変わる」「常に新しい技術を学ぶ必要がある」といった意見がありました。
 

チーム開発のためのケイパビリティ

ここまでスキルギャップの対策について話しが進みましたが、高いスキルを持った人でも、優秀なメンバーで構成されたチームだとしても、チームの方針を見ないで個人プレーな作業をするような環境では効率が良くないそうです。そのため、チームの一員になる、チームに受け入れられるという姿勢がチームでの開発では重要になることを話しました。さらに、自発的に作業を遂行することもチーム開発では欠かせないそうです。実際に、近年、短い期間で価値を出すために、また、アジャイルやそのフレームワークであるスクラムを採用する企業が増えており、これらの開発プロセスにおいては、チームメンバーにはチームプレーや、作業を自己管理する姿勢がより強く求められているそうです。
 

まとめ

まとめると、ITフリーランスの方々が企業のプロダクト開発チームに入るために、以下のスキルや姿勢が求められるようです。
・高い開発スキル
・組織やチームが採用しているプロセスの理解
・プロダクトが価値を届ける顧客についての理解
・コミュニケーション能力
 

Q&A

Q: ケイパビリティマップは公開されていますか?

A: 非公開です。ただし、大分類などは自分たちの作業から見つけていき、分類していく方法があるので、ぜひ自作してチームで活用してほしいと思います。
 

Q: ケイパビリティマップで得られた気づきについて教えてほしいです。

A: 開発チームにアサインされた際に、必要なスキルに初めて気づくことが多かったです。チームに入ってから学習することも多いですが、それが良いことだと感じています。まずは自己評価し、自分の状況を理解することが大事です。

Q: 豆蔵に入社する前は開発とのことですが、コンサルタントになった経緯は何でしょうか?

A: 俯瞰していろいろなチーム、プロジェクトに参加したいと考え、豆蔵にコンサルタントとして入社しました。いずれの立場にしても、ケイパビリティの考えは重要だと個人的に感じています。大項目は共通かもしれませんが、中項目などはカスタムできると考え、一度作成したケイパビリティマップを使って、新人の方にも活用できます。

所感

今回のセミナーでは、ケイパビリティやイネイブリングチームの側面から、スキルギャップの埋め方やチームが採用するプロセスの理解の重要性を学び、以下の点が印象に残りました。

・個人プレーではなく、チームプレーを意識して作業すること
・ケイパビリティマップを使い、自身の現状を理解すること
・作業を自己管理する姿勢をもつこと

サービスを開発する以上は、多くの人が関わる作業となるので、業務報告や技術面での質問といったコミュニケーション能力は欠かせないと感じました。また、技術面での質問をするためにも、ケイパビリティマップを用いて、自身に足りないスキルを理解することが必要だと感じました。さらに、自発的に作業を進めるために、自己管理し、日々新たな技術を取り込んでいくことが、今後のITエンジニアとして必須なスキルであると考えました。

最後に

豆蔵では、講演者が述べたように様々なプロジェクトに参加することができ、その中での技術のスキルトランスファーを重視しています。そのため、ITエンジニアとして、実践的に成長することが可能です。また、社員が常にスキルをアップデートできる学習環境が整備されています。例えば、オンライン学習教材の提供や、豆寄席という社内外の講師による技術勉強会を定期開催、ITに関連する技術者資格を取得することで、報奨金が支給される制度もあります。さらに、大学の研究者との産学連携プロジェクトを通じて、最新の知見や技術に触れることも可能です。このような環境であるため、社員一人一人が新たなスキルを習得しながら仕事ができます。ぜひ、ご興味のある方は豆蔵のホームページをご覧ください。